MONSTER 17巻『大人になったら面白いマンガ』

 

Monster (17) (ビッグコミックス)

Monster (17) (ビッグコミックス)

 

 ついにクライマックスが始まる。オールスターキャスト で、舞台は陸の孤島となった村である。

 

    私的名シーン

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    本当にうまいと思っているのか・・・・・?

 

  会話のかみあっていない、売り子とグリマーさん。こんな何気ない1ページにも不自然さもなくテーマをからめつつあるのは、相変わらずさすがである。この売り子は自分の環境に不満を抱き、自分自身としっくり来ないと感じている。自分の住む世界に共感できないために出て行きたがるのだが、これは若い頃にはよくあることで、外国映画でもしょっちゅう使われるようなシーンである。華やかな都会を夢見る田舎の女の子が好きな人とかけおち・・・というものなど典型的なものだろう。グリマーさんには『うまいものもある静かでいい町』も彼女にしてみれば『退屈』なのだ。

 

   『安らぎの家』

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   この話には犯罪者がよく出てくる。泥棒も殺人犯ほどではないが、犯罪者に変わりはない。そもそも犯罪者はまわりの人間と同じ世界には生きていないといえよう。泥棒などの犯罪者は誰もが寝ている時などを中心に活躍する。彼らの現実はまわりの人々の盲点となるような世界であり、まさに普通の人々とは相容れないのだ。しかし周りの人とだんだん仲良くなってしまえば、周りの人に対して犯罪を行おうという気持ちそのものが失われていく・・・。そうなれば泥棒はもう泥棒ではなくなる。

 

上の絵本マニアの男は『嫌な読後感は、すっかりなくなった・・ところが・・絵の方はさっぱりダメになった。』という。「目標を見失ったような感じというか・・・』とも言う。私はこれにも驚いた。よくマンガにこの手の現象を見るからだ。絵がきれいになってくると、マンガの話が平和になってくる、というか私的にはつまらなく、退屈になってくるのだ。だから私はマンガ家の絵がきれいになってくると気分があせってくるのだ。『マンガは絵よりも話だ。絵はキレイでなくてもいいから面白いままで頼む〜!』と思うのだが、いったんそうなるとほとんど終わりなのだ。世間的に成功して気持ちが安定してくるのだろうか。これはお手持ちのマンガでも確かめられるだろう。不思議な事に一流と思われるマンガ家は最後まで絵が完成しない。

 

今回の名シーン

 

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  記憶・・・これもまた人間の生きた証である。

記憶が失われれば、自分が呼ばれていた名前も忘れ、自分が何者かも忘れ、何もわからなくなる・・・。『忘れたくない記憶がある』自分が愛した人たち、その人たちと過ごした時間、それがニナの人生であり、その人生を愛しているのである。ヨハンとの記憶は『消しちゃいけない』という。なかったことにしたくてもそうであってはいけない、と。果たしてニナが出した答えとは・・・。