ヤヌスの鏡・1巻

 

ヤヌスの鏡 1 (集英社文庫―コミック版)

ヤヌスの鏡 1 (集英社文庫―コミック版)

 

 

 ヤヌス、というのは同時に内を見、外を見る、という古代ローマの神の名前である。

 

 多重人格、というのがこの話のテーマで、今でこそこういったものを誰もが知っているが、たぶん『ジキルとハイド』などこういう物語によって広まったものと思われる。精神医学の世界では『多重人格』というものがいまだに認められていないので映画や物語の世に対する影響というのは良くも悪くもけっこう大きなもののようだ。

 

  おとなしい主人公の少女、小沢ヒロミ

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P10

 小さい頃に鏡に向かって一人遊びをしていたヒロミちゃん。

鏡に映る自分を、もう1人の自分に見立てておしゃべりをする。私もこんな事をしていた事があるが。 

 

  いつもキビシいおばあちゃん

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P35

  ヒロミの母は恋愛に失敗し、海に身を投げて自殺した。

おばあちゃんはヒロミの母と父をいつもののしり、二言目には『おまえもお母さんのようになってしまうよ』と言い、いつもヒロミをキビシくしつけるのだった。

 

  突然、表情が変わるヒロミちゃん

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P40

 そのガラスの向こうに映った顔は・・・・いつものヒロミとはまるでちがう表情だった。 こういう演出はマンガ家のうまさだろう。こちらの顔が変わったのを見せるのではなく、ガラスに映った方の表情を見せるという方法をとることでもう1人の少女を暗示させる。

 

  ヒロミが好きな進東(しんどう)くん

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P190

 ヒロミが好きな進東くんは、一度はヒロミに好きだと言うものの

『高校生のくせに交際だのなんだのいやらしい』というおばあちゃんに育てられたヒロミにはとても受け入れられなかった。 

 

 しかしユミの方は全然ちがう。

『あたしを抱きたい?あたしがいいって言ってるのよ。』と平然と言う。

『きみは小沢(ヒロミ)くんじゃない!』と答える進東くんに『ヒロミはあたしで、あたしは『ヒロミ』なのよ』と言う。

そして『あんたは自分の思い描いたヒロミに恋しているだけなのよ』と言うのだった。