『ガラスの城』 推理小説のマイベストは今も昔も松本清張

 松本清張の中で一番トリックに感心した作品である。

松本清張はものすごく作品数が多いのだが、ヒマな学生時代、学校の図書室にある松本清張作品でめぼしいものは読んでしまい、仕方なく手に取ったのがこれだったのだが、それがもっとも印象に残った作品となった。

 

 だがなぜそんなに長い間、これだけ読まなかったかと言えばこれ、講談社文庫なのだ。松本清張はだいたいが新潮文庫で出ている。そして長編が多いので新潮文庫についているしおり代わりの『ヒモ』があるかどうかがけっこう大事なのだ。でもって、新潮文庫の方が表紙のデザインなどもセンスがあり、こちらは実につまらない表紙だ。 

ガラスの城 (講談社文庫)

ガラスの城 (講談社文庫)

 

 しかし、そんなことで長い間読まなかったことを後悔した。やはりそういうことは話の面白さにくらべれば、二の次だ。

 

 これは2人の女性の殺人事件の推理の手記が書かれているのだが、松本清張は女性の書き方がうまく、前半の女は普通のOL、後半の女はオールドミスのお局様なのだが、どちらもうまく表現されている。

 

 こういっては何だが、松本清張はなかなかの不細工で『まったく女性に縁がなかったことからかえって女性に対して冷静になれた』というようなことを語っている。女性が主人公である作品も数多い。

 

  ちょっとでも話を紹介するとネタバレになってしまうのだが。殺人事件を2人の女が推理し合って日記に書いていくのだが、2人の推理は一致するところもあれば、まったくちがうところもあり、それはなぜか・・・というとそこには驚愕の理由が!今ならばそうめずらしくないトリックなのだが、学生時代のころは『おおーっ』と思ったものだ

 

 映画などにしても面白いと思うのだが。